イラストレーションについて


上野公園で絵本祭りみたいのがあって、それを見に行ったときにちょっと変わった本を見つけました。出版社は覚えていないのですが、左のページに文章があって、右のページは空白になっていて、そこに自分で絵を描くと絵本ができあがるという本でした。それを見たときにイラストレーションの本質のようなものを見た気がしたのです。それは、イラストレーションと文字はとても強い繋がりがあるということ、文字と繋がることでイラストレーションになるということ。文字を取ってしまったらイラストレーションにはならないということでもあって、文字と絵が合わさって全体を整えてひとつのデザインができあがるということになるのです。またそれは、最終的にデザインされたものにならなければ、イラストレーションは生まれないということなのです。
 さて最終的にデザインに成るとはどういうことでしょうか。それはポスターをつくる、雑誌広告をつくる、本の表紙をつくるというときに、伝達したい情報を、できるだけ正確に、効率よく、伝えることができたときにデザインができた、デザインに成ったといえるのだと思うのです。だからこそ、文字、絵、デザイン、それらの要素のクオリティーも重要になってくるのです。
 さてそんな風に考えてみると、どうもイラストレーションの弱みのようなものも見えてくるのです。例えばそれは、イラストレーションになる前の絵(原画とよくいいますね。)を額に入れて部屋にかけてみるということを考えたときに、どうもイラストレーションの原画を額にいれて飾ってみてもいまひとつしっくりこない気がするのです。はたしてその絵をどのくらい長く部屋に飾っておけるでしょう、または、展示などで絵を見ていてそれを自分の部屋に飾りたいと思うでしょうか。つまりイラストレーションというのは、デザインと繋がることでイラストレーションに成り、その魅力も大きく発揮されるようになるため、その絵だけでは、なにかちょっと足りない弱い絵になってしまって、部屋にずっと飾っておける絵にはならないのではないかと思うのです。
 しかし、もちろんイラストレーションの種類も様々で、最終的なデザインのかたちになっていなくても、絵それだけでも長く部屋に飾って置きたくなるような絵もあるのです。例えばだれもが知っていると思う、「ディック・ブルーナ」さんの絵は長く飾っておける絵のひとつではないかと思うのです。それはこういう理由があるからだと思います。(絵を成り立たせる理由や技法はいくつかあるのですが、ここでは、ちょっとしぼって考えたいと思います。また有名だという理由も外して考えてみてください。もちろんだれもが知っているということは大きな理由のひとつなのですが、ある展示会などではじめてブルーナさんの絵お見たと仮定して考えてみたいと思います。)シンプルなその絵はもともと、とてもデザインされている絵であるということです。つまりその絵以外にデザイン要素や文字がなくても、十分デザインとして成り立つ絵だということです。また、シンプルと反比例することですが、きちんとしたシンプルな絵というのは、そのかたちにまで至る段階はそれなりに複雑でもあり、その過程の作業はデザイン的であるということです。それと絵のテーマとモチーフが絵を見る人の中のデザイン的なもの、またはデザイン的情報とむすびつきやすいということもあると思うのです。つまりもともとデザイン要素の含まれた絵であり、だからこそデザインとの相性もよく、そしてさらに絵として幾つかの魅力を合わせもつ作品だからなのです。